top of page

【AI注目発明】eコマースと返品テクノロジー

更新日:2021年2月24日



コロナ禍により、外出を控えオンラインショッピングが増えたという人も多いでしょう。デジタル化、非接触などを背景に、電子商取引(eコマース)の市場規模が拡大しています。その一方で、eコマースは返品が簡単なこともあり、商品の返品率の上昇が問題となっています。今回注目したのは、特定の商品を返品したい顧客Aと、その特定の商品を購入したい顧客Bを接続し、AからBへダイレクトに商品を発送することが可能なシステムの発明です(US20200402001、SHOPIFY INC.)


eコマース市場の拡大と、返品率の上昇


2019年における全世界のeコマース市場規模(BtoC)は3.53兆ドル(約367兆1200億円)にのぼります。その後も市場規模の拡大が予想されており、2023年には全世界で6.54兆ドル(約680兆1600億円)まで上昇すると予測されています※。

※経済産業省 令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査) https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200722003/20200722003-1.pdf


eコマース市場が拡大する一方で、返品率の上昇が問題になっています。返品手続きを消費者とのつながりを深める機会だと捉えている小売店も多く存在します。eコマースでは、消費者が実物を手に取って確認することができないので、消費者にとって、満足できない商品を返品できることかどうかは購入決定の重要な判断要素になるからです。その結果、eコマースの返品率は実店舗の3倍になるなど、eコマースが台頭するにつれ、返品の量は増え続けています。


返品が環境に与えるダメージ


小売業やファッション業界全体で、SDGs(持続可能な開発目標)が話題を呼んでいます。返品も例外ではありません。返品輸送には、梱包や輸送における二酸化炭素排出が伴います。高級服飾ブランドであるバーバリーは、過去に返品や不良在庫など3,460万ドル以上の売れ残り商品を燃やしていたことが発覚しました。高級ブランドが高級路線を維持するために、返品や売れ残りは焼却処分にしてしまうほうが得策と判断したためです。これは消費者から大きな反発を受けました。このように、返品による廃棄物に注目が集まっているため、小売事業者は返品対応に関する消費者への満足度を高めることと、環境負荷の軽減も考慮することなど、社会的な責任が求められます。


返品を前提としたeコマースのビジネスモデルと、返品テクノロジー


eコマースの拡大 → 消費者の利便性向上 → 返品の増加 → 環境へのダメージと、eコマースによる新たな社会課題が浮かび上がってきました。返品が少なくなればもちろん良いのですが、eコマースの今後の拡大傾向を考えると、返品を無くすことを考えるだけでなく、返品が増えることを前提として、eコマース全体で環境負荷を下げるように考えることも重要ではないでしょうか。


返品したい顧客と、購入したい顧客を接続する


そこで、今月注目したのは、特定の商品を返品したい顧客Aと、その特定の商品を購入したい顧客Bを接続し、AからBへダイレクトに商品を発送することが可能なシステムの発明です(US20200402001、SHOPIFY INC)。「顧客から顧客への返品プロセス」は最初の顧客から2番目の顧客への商品の配送を容易にし、販売者の配送と再梱包のコストを削減できる可能性があります。

Fig.4、Fig.5には、従来の返品プロセスと「顧客から顧客への返品プロセス」との比較が示されています。ロサンゼルスにいる商人、シカゴにいる顧客(買い手A)、ニューヨークにいる別の顧客(買い手B)を示しています。


従来の返品プロセス(Fig.4)

  • ニューヨークの買い手Bは、買い手Aから返品されたものと同じ商品を、商人に注文します。

  • 商人は、返品された商品(検品後)を買い手Bに発送します。費用は5ドルです。商人はこの費用を負担します。

  • 従来の返品プロセスのコストは25ドルです。これには、最初の買い手Aへの送料5ドル、返品送料5ドル、検査再梱包10ドル、2番目の買い手Bへの送料5ドルが含まれます。


「顧客から顧客への返品プロセス」(Fig.5)

  • 買い手Aが商品の返品を開始すると、顧客から顧客への返品プロセスは、買い手Aを、商品を購入しようとしている別の顧客と照合します。買い手Aは、買い手Bと照合され、次に、買い手Aは商品を買い手Bに直接発送します。

  • 買い手Aから買い手Bへの発送には5ドルの費用がかかりますが、商人が負担します。商人は、出荷前に商品と物理的な相互作用を持たないため、商人は、出荷前の商品の再梱包に対して支払いをしません。代わりに、再梱包は買い手Aによって実行されます。

  • 「顧客から顧客への返品プロセス」を使用した商品購入には、商人は、買い手Bに5ドルの割引を発行する。この割引は、商人から直接新しい商品を購入するのではなく、顧客から顧客への返品プロセスを使用して商品を購入するように買い手を奨励するインセンティブの形式です。


  • 買い手Aに対して、顧客間返品を促すインセンティブがなされます。 返品ページでは、買い手が返品方法を選択できます(Fig.11)。

    1.顧客間返品を使用する無料返品

2.通常または従来の返品に対してわずかな料金を支払う

  • 「顧客から顧客への返品プロセス」のコストは15ドルです。これには、商人から買い手Aへの送料5ドル、買い手Aから買い手Bへの送料5ドル、買い手Bへのインセンティブ割引5ドルが含まれます。

Amazon Primeが普及し無料返品が当たり前になり、メルカリで買ったものをすぐに売るのが普通になるなど、返品も選択肢の一つであって、特殊とか珍しく感じない消費者が増えてきているのかもしれません。返品を前提としたeコマースのビジネスモデル、社会全体のエコシステムにつながる新たな商機が生まれるのではないでしょうか。

 

マンスリー特許情報「人工知能(AI)の用途」

ネオテクノロジーは人工知能(AI)を活用した具体的用途に関する国内・米国特許情報を継続的に調査し、見やすく整理してお届けしています。特に、人工知能先進国であり全世界の優れた発明が集まる米国特許情報から、先進企業が人工知能をどんなビジネスに生かそうとしているのかを見ることができます。


「人工知能(AI)」レポートのご案内

人工知能AI技術は、いま最も注目されており、今後の発展が期待され、急速に変革を進めつつある最先端技術です。

Comments


bottom of page