〝未来に挑戦する研究開発技術者を応援したい” そんな思いから、ネオテクノロジーは、特許情報から創造の着想喚起に役立つ価値情報の提供を目的とした『NEOレポート』をシリーズ発刊しています。
『THzメタマテリアル』に引き続き、『MOF(Metal Organic Framework)』が発刊になりました。最近のUS特許から注目発明50件を抽出し、そこから、開発のヒントにつながる注目ポイントをまとめています。このブログでは、その注目ポイントの一部をご紹介します。
金属と有機配位子からなる結晶性の多孔質材料MOF (Metal-Organic Frameworks)は、目的の用途や機能に応じて金属や配位子の種類、孔径や表面の性質を分子レベルで設計でき、様々な産業での応用可能性が注目されています。
MOFの注目ポイント
ここでは、MOFを実際に使いこなす上での課題、MOFにさらに新しい機能を付加した工夫などからの注目ポイントをまとめました。
このブログでは、1.MOF材料①②の一例をご紹介します。
1.MOF材料
①MOF自体の機能を活用する
②MOF+α(MOFの機能では実現できない機能を追加する)
2.MOFによって広がる注目応用例
①生体応用
②配向制御や触媒、半導体物性など
①MOF自体の機能を活用する
MOFは、金属と有機化合物が規則性を持って連続的な三次元構造を形成したものです。MOFの特徴のひとつが「多孔性」で、使用する金属や有機化合物を変えることで細孔の大きさや形をナノレベルでデザインできます。このMOFの機能を利用して、MOF自身のデザイン性や多孔性を活用した技術を紹介します。
・物質を補足・吸着する
・物質の特性を固定(維持)する、送達(放出)する
ここでの注目すべきキーワードは、「環境問題」です。例えば、大気中のCO2を吸着した上で吸着時の熱を利用して発電する技術(US20220010937、個人)や、システムや機器から発せられる揮発性有機化合物(VOC)を吸着する技術(US11074899、IBM)など、MOFを活用して環境負荷を低減するための技術開発が進められています。高いデザイン性や柔軟性など、従来の無機多孔質材料にはない優れた特徴を有するMOF。目的に合うように細孔をデザインされたMOFそこから、新たな用途が見つかるかもしれません。
【US20220010937、個人、Fig.6】
②MOF+α(MOFの機能では実現できない機能を追加する)
MOF自身の能力を活かす研究だけでなく、MOFに新たな機能を付与する研究も進められています。MOFそのものの機能を最大限に発揮しつつ、MOFだけでは実現できない機能を追加・組み合わせることによって、MOFの応用範囲はさらに広がります。MOFに付与できる機能は様々です。以下では、その一部をご紹介します。
産業界においては、材料(素材)にさまざまな特性が付与されることによって機能が発現され、その機能を用いた最終製品が生産されます。川の流れに例えると、川上に相当する材料に、必要なプロセス加工や部品等を追加して、川下の最終製品となります。
導電性
MOFの多くは絶縁体です。そこで、現在、MOFの多孔性を維持しながら導電性を付与する方法が種々提案されています。MOFを使用した電子テキスタイル(e-textiles)が一例です。これは電子テキスタイルにMOFをコーティングしたもので、ガスサンプル中の分析物の量を判定するセンサーとして活用できます(US11092562、DARTMOUTH COLLEGE)。
【US20220010937、個人US11092562、DARTMOUTH COLLEGE、Fig.A1】
MOF中の金属イオンや有機配位子の種類を工夫したり、MOFを別の材料と複合化したり、MOF内部の細孔に別の物質を封入したりすれば、MOFに新たな機能を付与できます。
MOFが元々持っている「物質を捕捉・吸着する」「物質の特性を固定(維持)する、送達(放出)する」といった特性と、上記追加機能とを組み合わせれば、MOFの可能性はさらに広がるはずです。
さらに応用が広がるMOF
デザイン性が高く、金属イオンと有機配位子の組み合わせにより自在な設計が可能なMOF。今後もMOFのユニークな使用方法が提案され続けるでしょう。最近は、コンピュータシミュレーションや機械学習によるMOFの機能予測も行われています。このような動きも、MOFの発展に寄与することでしょう。
NEOレポート『MOF(Metal Organic Framework)』には、研究者の着想喚起につながる注目発明50例と、そこからの注目ポイントをまとめています。研究開発促進の一助として、ぜひご活用ください。
あなたの研究分野でもMOFが活用できないか、一度考えてみてはいかがでしょうか?
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